2019年03月24日

システムアーキテクチャシンポジウム

2019年3月22日(金)に慶應義塾三田キャンパス北館ホールにてシステムアーキテクチャシンポジウムを開催しました。
現在、政府では、つながる社会・データが活用される社会によって、よりよい価値を人に提供できるSociety5.0の実現を目指しています。つながる社会・データが活用される社会の実現のためには、データが相互にやりとりされ、利用されるような仕組み、つまり、新たな社会・産業のアーキテクチャを実現する必要があります。社会・産業のアーキテクチャが、プラットフォーマのような新たな産業プレイヤーの促進・抑制にも影響を与えることになります。同時に、MaaSのように複数のシステムがつながることで実現される社会・産業をデザインするためにも必須となる考え方となっています。世界ではNISTのようにシステムアーキテクチャという考え方を導入することで、新たな産業競争力を確保する動きをみせているところもあります。 
本シンポジウムでは、経産省および産業界と協力して、システムアーキテクチャについて様々な側面からのアプローチを知ることで、システムアーキテクチャという考え方およびその重要性について理解を進めることを目指して開催いたしました。当日は、約200名の方々に参加いただき、盛況に開催することができました。以下に簡単にシンポジウムをまとめたいと思います。

具体的には、以下のような流れでおこないました。
  • 14:00 〜 14:10:開会のご挨拶(慶應SDM 白坂)
  • 14:10 〜 14:40:システムアーキテクチャはなぜ政策として重要なのか(経済産業省 商務情報政策局 瀧島企画官
  • 14:40 〜 15:40 :システムアーキテクチャの基本的考え方(Vitech社社長、元INCOSEプレジデント David Long氏)
  • 15:40 〜 16:00:休憩
  • 16:00 〜 16:30:東芝IoTリファレンスアーキテクチャ(東芝 Chief Strategy Officer 島田氏)
  • 16:30 〜 17:00:DENSOの考えるMaaSアーキテクチャ(DENSOMaaS開発部 梶岡氏)
  • 17:00 〜 17:30:システムアーキテクチャをデザインする(慶應SDM 白坂)

まず、白坂が、なぜこのようなシステムアーキテクチャに特化したシンポジウムを企画したのか、その位置付けも含めて説明した上で、経済産業省 瀧島企画官から、なぜ経済産業省がシステムアーキテクチャに着目しているかを説明いただきました。要するに、社会・産業のアーキテクチャのアーキテクチャに応じて、どのような法を整備するかがかわってくる。それにより、どのような産業を醸成あるいは規制しようとするのかがかわってくるということになるので、経済産業省がそれに興味を持っているということになります。そこでは、社会・産業のシステムアーキテクチャについて考える新たな組織設立を目指していることも示されました。
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次に、David Long氏から、システムアーキテクチャというのはどういうものなのか?について、基本的な概念をわかりやすく説明してもらいました。この講演は、INCOSEで講演されたものをより詳しく説明したもので、基本的な概念を説明したものとしては本当に素晴らしい内容でした。
休憩を挟んで、東芝の島田氏から、ドイツのインダストリー4.0が、ドイツの政府政策のどこに位置するもであるかを説明した上で、東芝がIoTリファレンスアーキテクチャをどのように考えてつくったのかについて説明いただきました。
また、デンソーの梶岡氏からは、実際にデンソーがMaaSの実現にむけておこなっている活動を紹介しながら、デンソーの考えるMaaSアーキテクチャについて紹介をしていただきました。
最後に、白坂の方から、専門性を持った人が対象を俯瞰的に捉える難しさを説明した上で、多数の専門家の考えを同等することによってシステムアーキテクチャを表現していくこと、それを使って、つながる社会にむけてどのようなことをやっていけばいいのかについて説明をしました。慶應SDMは多くの専門家が集まる場所であるからこそ、「自分が正しい」と考える専門家の持つ専門家バイアスの存在を痛感しており、多くの視点が必要となる社会の俯瞰においては、完全に間違った方向にいたる可能性があるため、このあたりの注意を再度強めに説明させていただきました。
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このようなシンポジウムを引き続きおこなっていきたいと思っております。

posted by しらぴー at 18:17| Comment(0) | システムズエンジニアリング

2019年02月28日

システムアーキテクチャやシステムズエンジニアリング にかかわる公開イベント

システムアーキテクチャの重要性について、前の記事で投稿しました。見つからない人はこちらから辿ってみてください。
このシステムアーキテクチャの重要性をつたえるために、白坂が慶應SDMにて運営しているアーキテクティングラボにて、イベントを開催することとなりました。アーキテクティングラボは慶應SDMができたのち2009年につくったものですが、しばらく表立って活動をしておりませんでした。しかしながら、システムアーキテクチャという概念の重要性が強く主張されはじめたこともあり、改めて表向きの活動も開始いたしました。
ちなみに、システムアーキテクチャシンポジウムは以下のリンクから申し込みができます。

さらに、Complexなシステムを開発するためのアプローチであるモデルベースシステムズエンジニアリング (MBSE)の大家である、Vitech社の社長でもあり、INCOSEのPresidentでもあったDavid Long氏によるMBSE入門講座も開催いたします。こちらも1日で、MBSEの基本的な考え方を理解できる講座となっており、以前、白坂研としてClosedで開催したときにも大変好評だったものです。こちらを一般公開という形で開催いたします。
MBSE入門は以下のリンクから申し込みができます。

みなさんの参加をお待ちしております。


posted by しらぴー at 20:52| Comment(0) | システムズエンジニアリング

2019年01月28日

システムアーキテクチャとは

システムアーキテクチャーとは何か?
国際標準ISO/IEC/IEEE42010-2011(旧IEEE1471)を見てみると以下のように定義されている。
fundamental concepts or properties of a system in its environment embodied in its elements, relationships, and in the principles of its design and evolution

世界で最初に広まったシステムズエンジニアリング ツール「CORE」を出したベンダーであるVitech社が無料で配布している冊子"A Primer for Model-Based Systems Engineering”(2nd Edition)では以下のように説明されている。
System architecture/synthesis is concerned with what physical structure offers the best balance−considering manufacturing, testing, support, and other factors−in answering the customer’s need for the system.

また、Cameron, Bruce; Crawley, Edward; Selva, Daniel. Systems Architecture, Global Edition (ページ17).  . Kindle 版.では、以下のように書かれている。
architecture is an abstract description of the entities of a system and the relationship between those entities. In systems built by humans, this architecture can be represented as a set of decisions.

要するに、システムアーキテクチャとは、
システムの基本的な概念であり、
顧客のニーズを満たすためにバランスのとれた
システムの構成要素とそれらの関係性を表すものであり、
デザインと進化の原則となるものである。
設計者がおこなった一連の意思決定を反映したものである。

といったところでしょうか。
実際に、システムのアーキテクチャは、システムを特徴付ける。システムをどのようなアーキテクチャにするかは、まさに、そのシステムでどのような価値を提供するのか、提供する価値をどのように実現するのかを決定づけるものである。例えば、AIやIoTやビッグデータなどといったときに、これらをどのように活用して、どのような価値を提供するのかは、システムアーキテクチャをどのようにするのかにかかってくる。

SEBOKにあるとおり、上記の定義では、” fundamental”というのが曖昧で、明確に定義されていないという問題点がある。実際には、なんのためにその"architecture"を必要とするのかによって、抽象度が変わってくる。
これらを踏まえると、OMG Systems Modeling Language Specification, version 1.2, July 2010. における以下の定義も参考になる。

 “The organizational structure and associated behavior of a system. An architecture can be recursively decomposed into parts that interact through interfaces, relationships that connect parts, and constraints for assembling parts.”



慶應SDMにおいて設立当初から、このシステムアーキテクチャに着目したアーキテクティングラボを運営してきました。対象とするシステムは、ハードウェア・ソフトウェアシステムに限らず、ソーシャルシステム、ビジネスシステム、イノベーションシステムのアーキテクチャなど幅広く分析・ディスカッションをしてきました。

例えば、2010年度は「System Architecting of the Art」をテーマとして、人の心を動かすシステム(Art)をアーキテクチャの観点から分析することを行いました。メンバーが興味のあるArtについて、アーキテクチャの観点から分析し、報告する活動を行いました。この中では、映画のアーキテクチャ、ドラマのアーキテクチャをはじめとして、楽曲のアーキテクチャ、俳句のアーキテクチャ、色彩のアーキテクチャなどの興味深いアーキテクチャ分析結果が報告してもらい、ディスカッションをしました。対象は多岐にわたりましたが、その中から「緊張と弛緩の関係」、「アーキテクチャの時間的変化というアーキテクチャ」というArtのアーキテクチャに特徴的に見られる新しい観点を見つけるなど、面白い議論をしました。このアーキテクティングゼミはしばらく緩やかな活動しかしてなかったのですが、今年からまた積極的に活動をすることとしました。
posted by しらぴー at 01:46| Comment(0) | システムズエンジニアリング