2020年08月21日

「こうのとり9号機」ミッション完了

「こうのとり9号機(HTV9)」も無事ミッションが完了しました。これでHTVシリーズは、ミッション成功率が100%という結果を残すことができました。HTVの設計に当初から関わらせていただき、人生の一部をそのために捧げた身としては本当に嬉しいです。HTVは、自分を育ててくれたプロジェクトであり、一緒に開発をした仲間(メーカー、JAXA、NASAなど色々ですが)は本当にいまでも信頼できる関係を続けることができています。



HTVでは、1号機だけでなくその先も含めてライフサイクルを考えながら、システムをトップダウン(安全を立証する必要がある)とボトムアップ(これまでの宇宙での実績を最大限に活用する)を統合しながら、設計をすることを初期の設計段階から経験させていただきました。初期の設計では、毎週末のようにその分野の専門家をまじえながら、少人数で集中設計をさせていただき、設計のコンセプトをかんがえることを鍛えられました。
特に衝突安全(HTV-009)(しらないひとには呪文ですね)をメインに安全設計をおこないました。その過程では、NASAの安全審査でCBCS(コンピュータ安全)の要求をつくったマーク・チルドレスとも議論させてもらいました。さらに、いまではSTAMP/STPAですっかり有名になったMITのナンシー・レブソンのSafewareの第三者検証も受け、さらにMIT Draper研究所の第三者検証もうけるました。本当にシステム安全では、設計し、試験し、立証し、運用でハラハラし、本当にいい経験となりました。まだ動いてないFDIR(故障を自律的に見つけて復帰する機能)もありますが、基本的には必要なものはうごいているかなと思っています。また安全設計の中から、階層化FDIRというアプローチを作れたのは、本当にいい経験となりました。このときの経験は、いまでも色々なところで活用できています。
また、分散シミュレーション技術(HLA)を活用して訓練用の分散シミュレータをNASAと共同開発しました。このときは実質的にプロマネ的に動かさせていただき、会計年度の異なるNASAと、うまく歩調をあわせながら、世界初のシステムを構築させていただきました。これは、JAXAのHTV開発の事後評価でも、大きくミッション成功に寄与したといっていただけ、さらにNASAではHTV以外にも活用をしているものとなっています。
大規模複雑で、ミッションだけでなく安全性設計、試験、運用まで経験させていただき本当に勉強させていただきました。
白坂はHTV2まででしたが、その後のミッションも関係者のおかげで無事成功となりました。本当にありがとうございました。
posted by しらぴー at 10:08| Comment(0) | 宇宙開発
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