システムアーキテクチャーとは何か?
国際標準ISO/IEC/IEEE42010-2011(旧IEEE1471)を見てみると以下のように定義されている。
fundamental concepts or properties of a system in its environment embodied in its elements, relationships, and in the principles of its design and evolution
世界で最初に広まったシステムズエンジニアリング ツール「CORE」を出したベンダーであるVitech社が無料で配布している冊子"A Primer for Model-Based Systems Engineering”(2nd Edition)では以下のように説明されている。
System architecture/synthesis is concerned with what physical structure offers the best balance−considering manufacturing, testing, support, and other factors−in answering the customer’s need for the system.
また、Cameron, Bruce; Crawley, Edward; Selva, Daniel. Systems Architecture, Global Edition (ページ17). . Kindle 版.では、以下のように書かれている。
architecture is an abstract description of the entities of a system and the relationship between those entities. In systems built by humans, this architecture can be represented as a set of decisions.
要するに、システムアーキテクチャとは、
システムの基本的な概念であり、
顧客のニーズを満たすためにバランスのとれた
システムの構成要素とそれらの関係性を表すものであり、
デザインと進化の原則となるものである。
設計者がおこなった一連の意思決定を反映したものである。
といったところでしょうか。
実際に、システムのアーキテクチャは、システムを特徴付ける。システムをどのようなアーキテクチャにするかは、まさに、そのシステムでどのような価値を提供するのか、提供する価値をどのように実現するのかを決定づけるものである。例えば、AIやIoTやビッグデータなどといったときに、これらをどのように活用して、どのような価値を提供するのかは、システムアーキテクチャをどのようにするのかにかかってくる。
SEBOKにあるとおり、上記の定義では、” fundamental”というのが曖昧で、明確に定義されていないという問題点がある。実際には、なんのためにその"architecture"を必要とするのかによって、抽象度が変わってくる。
これらを踏まえると、OMG Systems Modeling Language Specification, version 1.2, July 2010. における以下の定義も参考になる。
“The organizational structure and associated behavior of a system. An architecture can be recursively decomposed into parts that interact through interfaces, relationships that connect parts, and constraints for assembling parts.”
慶應SDMにおいて設立当初から、このシステムアーキテクチャに着目したアーキテクティングラボを運営してきました。対象とするシステムは、ハードウェア・ソフトウェアシステムに限らず、ソーシャルシステム、ビジネスシステム、イノベーションシステムのアーキテクチャなど幅広く分析・ディスカッションをしてきました。
例えば、2010年度は「System Architecting of the Art」をテーマとして、人の心を動かすシステム(Art)をアーキテクチャの観点から分析することを行いました。メンバーが興味のあるArtについて、アーキテクチャの観点から分析し、報告する活動を行いました。この中では、映画のアーキテクチャ、ドラマのアーキテクチャをはじめとして、楽曲のアーキテクチャ、俳句のアーキテクチャ、色彩のアーキテクチャなどの興味深いアーキテクチャ分析結果が報告してもらい、ディスカッションをしました。対象は多岐にわたりましたが、その中から「緊張と弛緩の関係」、「アーキテクチャの時間的変化というアーキテクチャ」というArtのアーキテクチャに特徴的に見られる新しい観点を見つけるなど、面白い議論をしました。このアーキテクティングゼミはしばらく緩やかな活動しかしてなかったのですが、今年からまた積極的に活動をすることとしました。